2009年2月12日木曜日

蓋置

七種蓋置


 七種蓋置(しちしゅふたおき)とは、千利休が選んだと称されている、
「火舎(ほや)」、
「五徳(ごとく)」、
「三葉(みつば)」、
「一閑人(いっかんじん)」、
「栄螺(さざえ)」、
「三人形(みつにんぎょう)」、
「蟹(かに)」
の七種類の蓋置です。
七種蓋置には、それぞれ特別な扱いがあります。

火舎(ほや)

火舎蓋置(ほやふたおき)とは、火舎のついた小さな香炉を蓋置に見立てたものです。
火舎は、火屋・穂屋とも書き、香炉・手焙・火入などの上におおう蓋のことで、蓋のついた香炉のことを火舎香炉と呼びます。
火舎蓋置は、七種蓋置のうち、最も格の高いものとして扱われ、主に長板や台子で総飾りをするときに用います。

 

五徳(ごとく)

五徳蓋置(ごとく ふたおき)とは、輪に三本の柱が立ち、その先端が内側に曲がり爪状になっている蓋置です。
五徳蓋置は、炉や風炉中に据えて釜を載せる五徳をかたどった蓋置です。
五徳蓋置は、火卓とも書き、隠家、隠架、陰架(いんか、かくれが)ともいいます。
五徳蓋置は、火舎蓋置に次ぐ格の蓋置として、台子、袋棚にも用いられますが、透木釜、釣釜を使う炉の場合や、切合の風炉の場合など、五徳を使用しない場合に用います。
五徳蓋置は、三本の爪のうちひとつだけ大きな爪がある場合は、それを主爪といいます。

三葉(みつば)

三葉蓋置(みつば ふたおき)とは、大小の三つ葉を上下に組み合わせた形の蓋置です。
三葉蓋置は、ふつうは大きな三つ葉形と小さな三つ葉形が背でくっついた形で交互についています。

一閑人(いっかんじん)

一閑人蓋置(いっかんじん ふたおき)とは、井筒形の側に井戸を覗き込むような姿の人形がついた蓋置です。
一閑人蓋置は、一看人、一漢人とも書き、井看人(せいかんじん)、井戸覗(いどのぞき)とも、惻隠蓋置(そくいんのふたおき)ともいいます。

惻隠蓋置とは、人形を井戸に落ちそうな子供に見立て、『孟子』公孫丑上の
「人皆有不忍人之心。 今人乍見孺子將入於井、 皆有怵惕惻隱之心。
 無惻隱之心、非人也。 惻隱之心、仁之端也」にかけて洒落たものです。
【読み】
ひとみなひとにしのびざるのこころあり。 いま、ひとのたちまちじゅしのまさにせいにいらんとするをみれば、みなじゅつてきそくいんのこころあり。 そくいんのこころなきは、ひとにあらざるなり。 そくいんのこころは、じんのたんなり。
【意味】
人にはみな人に忍びないと思う心がある。 今、人であるものが、今にも井戸に落ちようとしている幼な子を見たとしたら、みな憐憫の情、可哀相と感じる心を持つものだ。 憐れみの心がない者は、人ではない。 憐れみの心は、仁であることの始まりである。

一閑人蓋置は、人形の代わりに龍・獅子などが付いたものもあり、また、人形のないものは井筒(いづつ)、無閑人(むかんじん)などともいいます。


栄螺(さざえ)

栄螺蓋置(さざえ ふたおき)とは、栄螺の形をした蓋置です。
栄螺蓋置は、栄螺貝の内部に金箔を押したものを使ったのが最初といわれ、のちにこれに似せて唐銅や陶磁器でつくたものを用いるようになったといわれます。
栄螺蓋置は、置きつけるときは口を上に向けて用い、飾るときは口を下に向けて飾ります。

「さざえの尻炙り」 炉の時、火の方に尖った方を向ける


三人形蓋置(みつにんぎょう ふたおき)

三人形蓋置(みつにんぎょう ふたおき)とは、三人の唐子が外向きに手をつなぎ輪になった形の蓋置です。
三人形蓋置は、三閑人・三漢人・三唐子ともいいます。
三人形蓋置は、中国では筆架・墨台で文房具の一つで、それを蓋置に見立てたものです。
三人形蓋置は、三体の内の一体だけ姿の異なる人形があり、その人形を正面とします。


蟹蓋置(かに ふたおき)

蟹蓋置(かに ふたおき)とは、蟹の形をかたどった蓋置です。
蟹蓋置は、文鎮や筆架などの文房具を蓋置に見立てたものといいます。
蟹蓋置は、蟹の頭のほうを正面とします。
蟹蓋置は、東山御物にあり、足利義政が慈照寺の庭に十三個の唐金の蟹を景として配し、その一つを紹鴎が蓋置に用いたのがその始まりと伝えられます。 
 


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